故郷-魯迅(竹内好訳)(2)
「刺叉があるじゃないか。忍び寄って、チャーを見つけたら突くのさ。あんちくしょう、りこうだから、こっちへ走ってくるよ。そうしてまたをくぐって逃げてしまうよ。なにしろ毛が油みたいにすべっこくて……。」
こんなにたくさん珍しいことがあろうなど、それまでわたしは思ってもみなかった。海には、そのような五色の貝殻があるものなのか。西瓜には、こんな危険な経歴があるものなのか。わたしは西瓜といえば、果物屋に売っているものとばかり思っていた。
「おいらとこの砂地では、高潮の時分になると『跳ね魚』がいっぱい跳ねるよ。みんなかえるみたいな足が二本あって……。」
ああ、閏土の心は神秘の宝庫で、わたしの遊び仲間とは大違いだ。こんなことはわたしの友達は何も知ってはいない。閏土が海辺にいる時、彼らはわたしと同様、高い塀に囲まれた中庭から四角な空を眺めているだけなのだ。
惜しくも正月は過ぎて、閏土は家へ帰らねばならなかった。別れがつらくて、わたしは声をあげて泣いた。閏土も台所の隅に隠れて、嫌がって泣いていたが、とうとう父親に連れてゆかれた。そのあと、彼は父親にことづけて、貝殻を一包みと、美しい鳥の羽を何本か届けてくれた。わたしも一、二度何か贈り物をしたが、それきり顔を合わす機会はなかった。
今、母の口から彼の名が出たので、この子供のころの思い出が、電光のように一挙によみがえり、わたしはやっと美しい故郷を見た思いがした。わたしはすぐこう答えた。
「そりゃいいな。で──今、どんな? ……。」
「どんなって……やっぱり、楽ではないようだが……。」そう答えて母は、戸外へ目をやった。
「あの連中、また来ている。道具を買うという口実で、その辺にあるものを勝手に持っていくのさ。ちょっと見てくるからね。」
母は立ち上がって出ていった。外では、数人の女の声がしていた。わたしは宏児をこちらへ呼んで、話し相手になってやった。字は書ける? よそへ行くの、うれしい? などなど。
「汽車に乗ってゆくの?」
「汽車に乗ってゆくんだよ。」
「お船は?」
「初めに、お船に乗って……。」
「まあまあ、こんなになって、ひげをこんなに生やして。」不意にかん高い声が響いた。
びっくりして頭
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